これを読めば消火器の設置基準がよくわかる|設置本数の計算方法も解説!

消防用設備

消火器の設置場所の基準は以下のように定められています。

  • 各階ごとに設置する。
  • 防火対象物の各部分から歩行距離で20m以内(大型消火器は30m以内)に消火器を設置する。
  • 付加設置設備(少量危険物・指定可燃物・変電設備・火気使用設備)があれば設置する。
  • 設置場所に適応した消火器を設置する。
  • 通行・避難に支障がなく、使用に際して容易に持ち出せる場所に設置する。
  • 床面からの高さが1.5m以下の箇所に設置する。
  • 屋外・厨房や蒸気・ガスなどが発生する場所に設置する場合は格納箱などに収納するなどの防護措置をする。

※各市町村の火災予防条例によっては上記の他にも付加設置設備を指定している場合もありますので気をつけましょう。

本記事ではこれらの設置基準について、特に重要なものを詳しく解説していきます。点検に携わる方や消防設備士乙6の試験を受ける方はこれを読んで消火器の設置場所の確認に役立ててください。

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消火器の設置義務

そもそも消火器を設置しなければならない条件は、防火対象物の用途によって異なります。その条件とは、防火対象物の延べ面積です。

防火対象物の延べ面積と設置基準

以下の黄色い囲みは用途によって消火器の設置が必要な延べ面積を示しています。

消火器の設置基準一覧

黄色の線で区切られた上の段は特定防火対象物のうち特に火の気に注意が必要な用途で、延べ面積に関わらず消火器を設置しなければなりません。

中段(※)はその他の特定防火対象物と、共同住宅や工場など(⑸項ロ、⑼項ロ、⑿項、⒀項、⒁項)の防火対象物で、延べ面積150㎡以上の場合に消火器の設置が必要になります。

※このうち飲食店などの政令別表第一⑶項については2019年10月に法改正され、基準が変更(後述)

下の段は上段中段以外の防火対象物で、延べ面積が300㎡以上の場合に消火器を設置しなければなりません。

【重要!】小規模飲食店等での消火器の設置が義務化

平成31年10月に消防法が一部改正され、以前は⑶項の飲食店や料理店等は延べ面積150㎡未満であれば消火器の設置は義務付けられていませんでしたが、この改正によって火器を使用する設備や器具があるものに限り、延べ面積に関わらず消火器の設置が義務付けられました。

この法改正の背景には、平成28年12月に新潟県糸魚川市で発生した火災が大きく関わっています。この火災では火元である飲食店から南風で広く延焼し、大規模な市街地火災へと発展しました。

大規模火災を受けて、飲食店等でも確実に初期消火を行う設備を設置し、火災の拡大を防ぐために延べ面積に関わらず消火設備の設置が義務付けられました。

消防設備士乙種6類の試験を受ける方は、古い参考書では法改正に対応していないものもあるので注意してください。常に新しい情報をキャッチするように!

消火器の設置数の計算方法

能力単位算定面積

設置が必要な場合、用途によって能力単位の必要な面積が異なります。

能力単位とは、消火器の消火薬剤の種類や大きさに応じて消火能力を示したものです。

以下の緑に囲まれた部分が能力単位算定面積です。これを基に能力単位を計算します。

消火器の設置基準一覧

例えば、⑷項の百貨店では能力単位算定面積が100㎡なので、100㎡で1単位の能力単位が必要になります。そのため、延べ面積2000㎡の百貨店では能力単位1の消火器20本設置しなければなりません。

建物の耐火構造や内装制限

消火器を設置する場合に建物が耐火構造で内装制限した場合は能力単位の算出を倍読み出来ます。表の()内の数字は、主要構造部を耐火構造とし、内装を不燃材料で仕上げた場合の能力単位算定面積です。

耐火構造の建物の例として鉄筋コンクリート造の建物は耐火構造です。他には鉄骨造で鉄骨を厚さ4cm以上のコンクリートブロックなどで覆ったものなどが耐火構造になります。

内装制限は建物の天井・壁の仕上げ(壁紙クロスなど)に不燃材等で仕上げをした場合のことで、居室だけでなく廊下や階段の仕上げについても同じです。

消火設備との組み合わせで能力単位を減少できる

消火器の設置を要する部分に「屋内消火栓」「スプリンクラー設備」などを技術基準に則って適正に設けた場合で、火災の適応性が消火器と消火設備で一緒の場合は消火器の能力単位を1/2もしくは1/3まで減少できます。

詳細は消防法施行規則第8条(消火器具の設置個数の減少)に記述があります。

能力単位は減免できますが、歩行距離は変わらないので注意しましょう。

能力単位の計算

消火器を設置するにあたり、必要な能力単位というものを計算して能力単位が足りる様に消火器を設置します。

例えば⑿項の工場で、建物が非耐火構造とします。そうすると、必要な能力単位は延べ面積/100㎡で算出できます。

仮に延べ面積が5050㎡だとしたら、5050/100で50.5となり、小数点以下は繰り上げになるので必要な能力単位は51になります。それで設置する消火器の各能力単位を合計して能力単位が足りる本数の消火器を設置します。

消火器のラベルにA-3、B-7、Cなどの表記がありますが、これが消火器の能力単位になります。

ちなみに能力単位のAは普通火災Bは油火災Cは電気火災になります。

消火器の能力単位表示

このA-3がここで言っている能力単位になり、この消火器は3単位となります。

今回の工場で必要な能力単位51を満たすように消化器を設置しなければならないので、この消化器は17本以上設置すればよい、ということになります。

消火器の能力単位は消火器の器種(粉末、強化液、泡など)や大きさ(大型消火器など)で変わるので設置しようとしている消火器の能力単位がいくつなのかを確認する必要があります。

消火器の歩行距離について

消火器は「防火対象物の各部分から歩行距離20m以内(大型消火器は30m以内)」に設置する、定められています。しかし、「各部分」や「歩行距離」といった表現では少々分かりにくいですよね。

消火器の歩行距離

上記の図はよくある工場に消火器を配置した場合の例です。建物のどこからでも歩行距離20m以内に消火器があればいいという決まりなので、緑の線が20m以内であればよいことになります。

ただ、移動が困難な机や通れない生産ラインがあり、歩行距離ではこの机等を迂回していかなければならないので、緑の線は机等を迂回しています。

上記迂回を要する物品等には

  • 床に固定されているもの(家具や棚、生産用の機械など)
  • 移動が容易ではないもの(重量物や大型の家具など)

があり、逆を言えば移動が容易なもの(軽くて大きくないもの)はこの迂回をしなくてもよいことになります。

付加設置が必要な場所

以下のものを貯蔵する施設や用途の防火対象物では、通常の消火器の設置のほかに、その環境に対応した消火器を加えて設置しなければなりません。

少量危険物

1単位以上の消火器で、なおかつ危険物に適応する消火器を設置します。例えば第4類第二石油類の灯油を500ℓ貯蔵している少量危険物なら、第4類の火災に適応する消火器で1単位以上ある消火器であればOKです。

指定可燃物

指定数量の50倍で1単位必要です。なので綿花を10000㎏貯蔵すると指定可燃物の50倍になり1単位以上の消火器の設置が必要です。

また指定可燃物を500倍以上貯蔵・取扱う場合は大型消火器の設置が必要です

電気設備

電気設備の面積が100㎡以下ごとに消火器1本必要です。なので101㎡なら2本必要です。

多量火気使用場所

ボイラー室などの面積が25㎡以下ごとに1単位必要です。なので51㎡なら3単位必要です。

実際に設計してみよう

消防設備士の仕事をしていると、新規建物の平面図を渡されて「消火器の設計よろしくな」と言われるパターンはよくあります。

設計の手順を確認しておけば、急に消火器の設置場所の設計を任されても安心。そつなくこなしてどんどん仕事を任せてもらえるようになりましょう。

ステップ1 建物の用途と延べ面積を算出する

防火対象物の延べ面積と用途が分かれば、対応表から必要な能力単位を割り出すことができます。この時、耐火構造か否か能力単位を減少できる消火設備の設置があるかという点も確認しましょう。

必要な能力単位が分かれば、その数を設置しようとしている消火器の能力単位で割ることで最低設置消火器本数が出てきます。

ステップ2 建物のどの部分からでも歩行距離20m以内になるように設計する

設置場所を設計する際は、まず最低設置本数を各階に分配します。

例えば3階建ての防火対象物で最低設置本数が21本の場合、各階に7本は設置できます。その7本を書く部分から歩行距離20m以内にあるように設置し、歩行距離が20m以上になってしまう場合は設置する消火器を増やして歩行距離20m以内に収まるように設計します。

ステップ3 付加設置部分の消火器が必要か確認する

付加設置消火器は防火対象物防護とは別で計算するので、建物防護が設計出来てからでOKです。少量危険物・指定可燃物、電気設備、火気使用設備があれば個別で計算して消火器の本数を追加します。

 これで建物に必要な能力単位、耐火構造の有無、緩和対象設備、各階に設置される消火器の本数、付加設置設備が算出できたのでこれを基に消防用設備等試験結果報告書(通称設置届)を記入します。

付加設置する消火器は、ステップ1、ステップ2で出した消火器本数とは別で計算します。通常の防火対象物保護のための設計をした後、少量危険物や指定可燃物などがあれば個別で追加の消火器を計算します。

この3ステップで防火対象物に必要な消火器の設計は完了です。この手順で設計すれば状況に応じた必要な能力単位、各階の設置本数も完璧!

 まとめ

本記事では消火器の設置場所について解説しました。

消防設備士の仕事では消火器の設計を任されることがよくあるでしょう。そんな時にこれを読んで消火器の設計は完璧にできるようになれば幸いです。

また、これから消防設備士になろうと消防設備士乙種6類の勉強をしている方も、本記事で設置基準や能力単位計算について理解できれば嬉しいです。

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